雨の日の革靴の対策|履く前の準備と濡れたあとの手入れ、雨染みの落とし方

結論から言うと、雨の日でも革靴は履けますが、出かける前の準備と、帰宅後すぐの手入れが欠かせません。濡れたまま放っておくと、雨染みや白い粉、型崩れのもとになります。この記事では、仕事や就活、冠婚葬祭などで雨の日も革靴を履く方に向けて、雨に向く革靴と前日の準備を整理します。あわせて、外出先と帰宅後の手入れ、雨染みや白い粉の落とし方も紹介します。対象は、表面がなめらかな革(スムースレザー)の靴です。ふだんの手入れの基本は革靴の手入れ方法で詳しく紹介しています。
結論
出かける前に乾いた靴へ防水スプレーをかけておき、帰ったら水を拭いてシューツリーを入れ、日陰で自然に乾かすのが基本です。完全に乾いたらクリーナーとクリームで手入れし、雨染みや白い粉はクリーナーで落とします。
雨で濡れると革靴はどうなる?
まずは、雨が革靴にどんな影響を与えるのかを押さえておきましょう。何が起きるかを知っておくと、どの手入れが必要かを判断しやすくなります。
濡れても革がだめになるわけではない
東京都立皮革技術センターは、日本の皮革産業の業界団体(JLIA)の今井哲夫氏による資料「皮革の特性」を公開しています。この資料によると、革をつくる工程のうち、鞣しから染色までは水の中で行われます。そのため、革を水に濡らしても、鞣し(なめし)という基本的な面では問題はないと説明されています。ただし同じ資料には、風合いや光沢などの見た目が大きく変わるおそれもある、と書かれています。雨の日に気をつけたいのは、革そのものより見た目や形の変化です。
雨で起きやすいトラブル
| トラブル | どんな状態か | 主な原因 |
|---|---|---|
| 白い粉・白い斑点 | 乾いたあと、表面に白いものが浮き出る | 革の塩分や汗がにじみ出たもの(リーガル) |
| 雨染み | 雨に濡れたところが、乾いたあとシミのように残る | 雨に濡れたあと、そのまま乾く(コロンブス) |
| 硬くなる・縮む | 乾いたあと、革がごわついて硬くなる | 濡れて乾くと縮んで硬くなる性質(JLIA の資料) |
| 型崩れ | つま先が反る、甲にシワが寄る | 濡れて柔らかくなった状態で形を整えずに乾かす |
| ツヤがなくなる・カサつく | 表面がカサつき、ツヤが落ちる | 雨でクリームの栄養分や油分、ワックスが抜ける(リーガル、コロンブス、JLIA の資料) |
| カビ | 白や緑の粉のようなものが生える | 湿ったまま靴箱にしまう |
表に挙げた JLIA の資料では、濡れた革を乾かしすぎると縮みが大きくなることにも触れています。生乾きの状態で、ときどきもみほぐしながら乾かすと、形や風合いが戻るとも書かれています。
革底(レザーソール)は特に水に弱い
靴底が革でできた靴(レザーソール)は、雨の日に特に気をつけたい靴です。コロンブスは、レザーソールが濡れる・乾くをくり返すことで油分が抜け、劣化すると説明しています。靴底は、歩くたびに濡れた地面へ触れる場所です。自分の靴の底が革かゴムかわからない場合は、一度ひっくり返して確かめておきましょう。
雨の日に向く革靴・向かない革靴
雨の予報が出ている日は、手持ちの靴の中から雨に向くものを選ぶのがおすすめです。次の表を目安にしてください。
| 項目 | 雨の日に向く | 雨の日は避けたい |
|---|---|---|
| 靴底 | ゴム底(ラバーソール) | 革底(レザーソール) |
| 革の種類 | 防水スプレーをかけたスムースレザー、撥水加工された革 | 起毛革(スエード・ヌバック)、手入れをしていない乾いた革 |
| 状態 | ふだんからクリームで手入れしている | 長く手入れをしていない、ひび割れがある |
ゴム底の靴が扱いやすい
ゴム底の靴は、レザーソールのように底から水を吸って傷む心配が少なくなります。雨の日によく革靴を履く方は、ゴム底の1足を「雨の日用」に決めておくと迷いにくくなります。
スエードやエナメルは手入れが違う
スエードやヌバックなどの起毛革は、スムースレザーとは手入れの道具も方法も違います。起毛革の靴はスエード靴の手入れ方法をご覧ください。エナメルは、コロンブスの防水スプレー「アメダス」では使えない素材として挙げられています。エナメルや、ワニなどの爬虫類の革は、靴のメーカーや取扱説明書の案内に従いましょう。
雨の強さで靴を使い分ける
小雨や、帰りに降るかもしれない程度なら、準備をした革靴でも対応しやすいです。一方、土砂降りの日や外を長く歩く日は、革靴が深く濡れやすくなります。職場に着いてから履き替えられるなら、行き帰りはレインシューズにする方法もあります。大切な革靴は、強い雨の日には履かないというのも選び方の1つです。
滑りやすい場所に気をつける
雨の日は、靴だけでなく足もとの安全にも気を配りたいところです。東京都生活文化局は、注意喚起「雨の日の転倒事故に注意!」(令和2年6月)を公開しています。そこでは、雨で濡れると滑りやすくなる場所として、マンホール、道路の白線、タイルの歩道が挙げられています。駅やスーパーなど、建物の中の濡れた床にも注意するよう呼びかけています。こうした場所では、歩幅を小さくしてゆっくり歩くと安心です。
前日〜出かける前の準備
雨の日の手入れは、濡れる前から始まっています。天気予報で雨とわかったら、前日のうちに準備しておくのがおすすめです。
ふだんのクリームの手入れが土台になる
コロンブスやリーガルは、濡れた革は油分や栄養分が失われやすいと説明しています。ふだんから汚れを落としてクリームを塗っておくと、雨に濡れたあとも状態を保ちやすくなります。クリームの塗り方は、革靴の手入れ方法の「定期的なお手入れの手順」で紹介しています。
コロンブスのQ&Aでは、クリームより先に防水スプレーをかけた場合、防水のはたらきは弱まる可能性があると案内しています。クリームで手入れをする日は、クリームのあとに防水スプレーをかける順番にしましょう。
防水スプレーのかけ方
ここでは、コロンブスの防水スプレー「アメダス」の公式の案内をもとに、手順をまとめます。製品によって使い方は違うため、お手持ちのスプレーの表示も確かめてください。
靴が乾いていることを確かめる
コロンブスは、濡れている靴は十分に乾かしてからスプレーするよう案内しています。前の日に濡れた靴は、乾ききっているか確かめてから使います。
屋外で、靴全体にかける
スプレーは屋外で使います。アメダスの場合、靴は片足につき約5秒が目安です。表面がしっとり濡れる程度で止めます。
15分以上乾かす
アメダスは、かけたあと15分以上の乾燥が必要だとしています。一度軽くかけて約15分乾かし、もう一度軽くかけるとよいとも案内しています。
白っぽくなったら布で拭く
かけすぎて表面が白っぽくなった場合は、乾いた柔らかい布でよく拭き取ります。
かけてから乾くまでに時間がかかるので、出かける直前ではなく、前日の夜にかけておくと慌てずに済みます。コロンブスは、毎日履く靴なら1〜2週間に1回を目安としています。雨の中を長い時間歩いたあとや、汚れを落としたあとは、改めてかけるとよいとも案内しています。
持っていくと安心なもの
雨の日に革靴で出かけるときは、次のものがあると、外出先で濡れても手当てがしやすくなります。
- 乾いたハンカチやタオル: 靴の表面の水を押さえて取るのに使います
- 替えの靴下: 靴の中まで濡れたときに履き替えられます
- 職場に置いておく靴: 履き替えられる環境なら、濡れた靴を休ませられます
外出先で濡れてしまったら
外出先では、できることが限られます。帰宅後にきちんと手入れをするまでの間は、次のことだけしておきましょう。
押さえるように水を拭く
靴の表面についた水は、乾いたハンカチやタオルで押さえるように吸い取ります。濡れた革をゴシゴシとこするのではなく、そっと押さえるのがポイントです。泥はねがついたときも、こすらずに水分ごと押さえて取ります。
脱げる場面では、靴を休ませる
職場などで履き替えられる場合は、濡れた靴を脱いで風通しのよい場所に置いておきます。ストーブやヒーターの前に置くのは避けます。理由は、次の章で説明します。
帰宅後の手入れの手順
帰宅したら、なるべく早く手入れを始めます。ここでは、コロンブス「雨の日オススメケア」と、リーガル「靴のお手入れ方法について」に共通する流れでまとめます。
表面の水と汚れを拭き取る
乾いた布で、表面の水や泥を押さえるように拭き取ります。靴紐のある靴は、紐をゆるめるか外しておくと、中まで乾きやすくなります。
シューツリーか乾燥剤を入れて形を整える
コロンブスはシューツリーを入れて形を整えるよう、リーガルは靴の乾燥剤を入れるよう案内しています。靴の中まで濡れているときは、乾燥剤や紙で先に水分を吸わせ、そのあとシューツリーで形を整える方法もあります。
風通しのよい日陰で自然に乾かす
リーガルは、風通しのよい日陰で半日ほどを目安としています。靴底まで濡れたときは、靴を立てかけると底にも風が通りやすくなります。
生乾きのうちに形を確かめる
濡れた革は、乾くと縮んで硬くなりやすい性質があります。生乾きの段階で、シワやつま先の形が崩れていないかを確かめ、手で軽くもみほぐして整えます。
完全に乾いたら、クリーナーで汚れを落とす
コロンブスは、完全に乾いてからクリーナーで汚れを落とすよう案内しています。リーガルも、乾いたら全体をブラッシングしてから、クリーナーで汚れを拭き取る流れです。
クリームで油分と栄養を補う
雨に濡れた革は、塗っていたクリームの栄養分や油分が抜けがちです。乳化性クリームを少量塗り、ブラシと布で仕上げます。
仕上げに防水スプレーをかける
次の雨や汚れに備えて、最後に防水スプレーをかけます。クリームのあとにかけるのがポイントです。
レザーソールの靴は、靴底にも油分を補っておきたいところです。コロンブスは、ソールを油分で潤しておくと、雨の日に水が染み込みにくくなると説明しています。レザーソール専用の手入れ用品を使い、靴の表面用のクリームやオイルを流用しないのが安心です。コロンブスのQ&Aでは、ミンクオイルをレザーソールに塗ると滑りやすくなるため、おすすめしていないとしています。
メーカーごとの説明の違い
基本の流れは同じですが、細かな点はメーカーによって少しずつ違います。
| 項目 | コロンブス | リーガル | M.モゥブレィ(サドルソープで洗ったあと) |
|---|---|---|---|
| 形を整える | シューツリーを入れる | 靴の乾燥剤を入れる | シューツリーを入れる |
| 乾かす場所 | 風通しのよい日陰 | 風通しのよい日陰 | 日陰 |
| 乾かす時間の目安 | 記載なし(完全に乾くまで) | 半日ほど | 半日以上 |
| 乾いたあと | クリーナー→クリーム→防水スプレー | ブラッシング→クリーナー→クリーム→撥水スプレー | 革の種類に合ったお手入れ |
出典:コロンブス「雨の日オススメケア」、リーガル「靴のお手入れ方法について」、M.モゥブレィ「サドルソープ」
どのメーカーも、熱を当てずに日陰で乾かし、乾いてから手入れをする点は共通しています。乾き具合は、つま先の内側を触って、冷たさや湿り気が残っていないかで確かめると安心です。
乾かすときに避けたいこと
早く乾かしたくても、次のことは避けましょう。
- ドライヤーの熱風やストーブ、ヒーターで乾かす: 資料「皮革の取扱いの基本(2)」では、革は濡れていると比較的低い温度で縮んで硬くなることがあると説明されています。「皮革の特性」では、熱で一度変わってしまった革は硬くもろくなり、元に戻せないとしています
- 直射日光に当てる: メーカー各社は、乾かす場所を「日陰」としています
- 新聞紙を詰めたままにする: 資料「皮革の取扱いの基本(2)」は、保管時に新聞紙や印刷物を詰めものに使うと、インクの移ることがあるとしています。水を吸わせるなら、無地の紙やキッチンペーパーを使い、湿ったら取り替えます
- 乾ききる前にクリーナーやクリームを使う: コロンブスは、完全に乾いてから汚れを落とし、クリームを塗る順番で案内しています
扇風機の風を当てるなど、熱を使わずに早く乾かす方法は、濡れた靴を早く乾かす方法で詳しく紹介しています。乾いたあとのしまい方は、靴の保管方法もあわせてご覧ください。
雨染み・白い粉の落とし方
乾いたあとに、表面に白い粉やまだらのシミが出ていることがあります。慌てずに、シミの種類に合わせて手入れしましょう。
白い粉・白い斑点は、塩分や汗
リーガルは、濡れた靴に浮き出る白い斑点は、革の塩分や汗がにじみ出たものと説明しています。東京都立皮革技術センターが公開している日本皮革技術協会の稲次俊敬氏の資料「クレーム事例から学ぶ革の特性17 白い斑点の出現(1)」にも、同じ現象が取り上げられています。革にしみ込んだ水が革の中の塩分を溶かし、乾くときに表面へ運ばれて、塩分だけが残るという説明です。コロンブスは、雨による「シミ」や「塩フキ」は、ローションタイプのクリーナーで落とせると案内しています。
完全に乾いてから作業する
コロンブスは、完全に乾いてからクリーナーで汚れを落とすよう案内しています。つま先の内側まで乾いたことを確かめてから始めます。
ブラシでホコリを払う
馬毛ブラシで、表面のホコリや乾いた泥を払っておきます。
クロスにクリーナーを取り、なでるように拭く
クリーナーは靴に直接つけず、クロスに取って使います。初めて使うクリーナーは、かかとの内側など目立たない場所で試してからにしましょう。
クリームで仕上げる
クリーナーで落とすと、クリームの油分も一緒に落ちます。最後にクリームを塗って仕上げます。
まだらの雨染み
雨が一部にだけかかると、濡れたところがシミのように残ることがあります。コロンブスは、雨で起きる「シミ」もローションタイプのクリーナーで落とせると案内しています。まずは、上の手順でクリーナーを試してみてください。それでも残るときに、自己流で靴を水につけると、色落ちや型崩れのおそれがあります。試すなら、次のサドルソープのように、革靴を洗うための専用品を使う方法が安心です。
落ちないときは、サドルソープか専門店へ
M.モゥブレィは、革靴を水洗いするための石けん「サドルソープ」で、雨染みや塩吹きを落とす方法を紹介しています。靴全体をしっかり濡らしてから泡で洗い、シューツリーを入れて日陰で半日以上乾かす流れです。ただし同社は、スエードやヌバックなどの起毛革、エナメル、爬虫類の革には使えないとしています。シミの種類や時間の経ち方によっては、サドルソープでも落ちない場合があるとも書かれています。
自分で落とせないシミや、大切な靴のシミは、靴修理店や靴のクリーニングを受けつける店に相談する方法もあります。
カビが生えていたら
濡れた靴を乾かしきらずにしまうと、カビの生えることがあります。表面に白や緑の粉のようなものが出ていたら、カビの可能性があります。落とし方は、靴のカビの取り方で詳しく紹介しています。
よくある失敗・注意点
- 濡れた靴に防水スプレーをかける: 乾いた靴にかけるのが基本です。濡れたときは、乾かしてからかけます
- 出かける直前にスプレーする: 乾く時間が足りず、そのまま雨に濡れてしまいます。前日の夜にかけておくと安心です
- 濡れた革をタオルでゴシゴシこする: こすらず、押さえるように拭きます
- ドライヤーやストーブで乾かす: 濡れた革は熱で縮んで硬くなりやすく、元に戻せないことがあります
- 乾いたらそのまま靴箱へしまう: 雨で油分が抜けた革は、クリームで補ってからしまいます
- 翌日も同じ靴を履く: 中まで乾いていない靴を履くと、型崩れや臭いのもとになります。靴の臭いが気になる方は靴の臭いを消す方法もご覧ください
よくある質問
雨の日に革靴を履くのはやめたほうがいいですか?
革は濡れても、鞣しの面では問題はないと業界団体の資料で説明されています。ただし、見た目や形は変わりやすくなります。革底の靴は避け、防水スプレーと帰宅後の手入れをセットで行えば、雨の日でも履きやすくなります。
防水スプレーは雨の日の朝にかけても間に合いますか?
コロンブスの防水スプレー「アメダス」は、かけたあと15分以上の乾燥が必要だとしています。朝にかけるなら、乾く時間を見込んで早めにかけましょう。慌てずに済むよう、前日の夜にかけておくのがおすすめです。
濡れた革靴をドライヤーで早く乾かしてもいいですか?
避けたほうがよいと言われています。業界団体 JLIA の今井哲夫氏の資料では、革は濡れていると比較的低い温度で縮んで硬くなることがあると説明されています。日陰で自然に乾かし、熱を使わない乾かし方を選びましょう。
雨染みが落ちないときはどうすればいいですか?
まずは完全に乾かしてから、ローションタイプのクリーナーで拭き取ります。それでも落ちない場合は、革靴を水洗いする専用の石けん(サドルソープ)を使う方法があります。大切な靴や、自分で落とせないシミは、靴修理店などに相談すると安心です。
まとめ
雨の日でも、準備と手入れをすれば革靴は履けます。ポイントは、次の3つです。
- 出かける前: ゴム底の靴を選び、乾いた靴に防水スプレーをかけて15分以上乾かす
- 帰宅後: 水を押さえて拭き取り、シューツリーか乾燥剤を入れて、日陰で自然に乾かす
- 乾いたら: クリーナーで汚れや白い粉を落とし、クリームで油分を補ってから防水スプレーで仕上げる
濡れた革は熱で縮みやすいので、ドライヤーやストーブで乾かすのは避けましょう。落ちない雨染みは、サドルソープを使うか、靴修理店に相談する方法があります。
ふだんの手入れは革靴の手入れ方法、熱を使わない乾かし方は濡れた靴を早く乾かす方法で紹介しています。ブーツの手入れはブーツの手入れ方法、就活で履く靴は就活の靴の選び方もあわせてご覧ください。